『ドグラ・マグラ上・下』

おもしろかった

結局よく意味分からなかったけど
自分が犯人で幻覚見ながら無限ループってことでいいのかな
たぶんp90がネタバレなんだろうな
この本の中で実際にドグマグが出てきてビビった
おもしろい

読んだけど別に気は狂わなかった

もっと文体とか文字の並べ方が変なのかと思ったけど文章自体はしごく全うだし
イデアもおもしろい
心理遺伝
この時代にこの発想が生まれるのはきっとすごいんだろう

p43
われわれの日常生活の中で、われわれの心理状態が見るもの聞くものによって刺激されつつ、引っ切りなしに変化して行く。そうしてタッタ一人で腹を立てたり、悲しんだり、ニコニコしたりするのは、やはり一種の夢中遊行でありまして、その心理が変化して行く刹那刹那の到るところには、こうした『夢中遊行』『自我忘失』『自我覚醒』という経過が、極度の短さで繰り返されている。

p89
…『精神病はこの世の活地獄』という事実を痛切に唄いあらわした阿呆陀羅経の文句…
…『世界の人間は一人残らず精神病者』という事実を立証する精神科学者の談話筆記…
…胎児を主人公とする万有進化の大悪夢に関する学術論文…
…『脳髄は一種の電話交換局に過ぎない』と喝破した精神病患者の演説記録…
…冗談半分に書いたような遺言書…
…唐時代の名工が描いた死美人の腐敗画像…
…その腐敗美人の生前に生き写しともいうべき現代の美少女に恋い慕われた一人の美青年が、無意識のうちに犯した残虐、不倫、見るに堪えない傷害、殺人事件の調査書類…

p168
万が一にも「おればかりはキチガイじゃないんだぞ。絶対に完全無欠な精神を持っている人間なんだぞ」という自信を持っているお方があったら、イツ何時でも吾輩のことろへおいで下さいだ。そのお方は当大学の研究患者として、官費で入院さして上げる。ちょうどその式の患者が、学生の抗議に必要なところだからね…。

p180
天地開闢の初め、イーブに知恵の果を喰わせたサタンの蛇が、更に、そのアダム、イーブの子孫を呪うべく、人間の頭蓋骨の空洞に忍び込んで、トグロを巻いて潜み隠れた…それが「物を考える脳髄」の前身である…と…。

p195
わが青年名探偵アンポンタン・ポカン博士は、タッタ今地上にタタキつけたばかりのダラケの脳髄を指して、コンナ論証を続けているのだ。

p247
…主君を殺して城を乗っ取るところ…
(中略)
次から次に夢の中へ現れて来るので、そのたんびに胎児は驚いて、おびえて、苦しがって、母の胎内でビクリビクリと手足を動かしている。

p275
普通人と精神病者との区別が付けられないのは、刑務所の中にいる人間と、外を歩いている人間との善悪の区別が付けられないのと同じことである。すなわち地球表面上は古今往来ソックリそのまま「狂人の一大解放治療場」となっているので、九大の解放治療場は、その小さな模型に過ぎないのだ。

p217
「…すなわち宇宙空間一切のガラクタは皆、めいめい勝手な心理遺伝と戦いしんつつ、植物・動物・人間と進化して来たもので、コイツに囚われている奴ほど自由の利かない下等な生物ということになる。だから思い切って今のうちにキレイサッパリと心理遺伝から超越してしまえ。ホントウに開放された青天井の人間になれ…という宣言を、新生のまま民衆にタタキつけたのがキリストで、オブラートに包んで投り出したのが孔子で、おいしいお菓子を仕込んで、デコデコと飾り立てて、虫下しみたように鐘や太鼓で囃し立てて売り出したのがお釈迦様ということになるんだ。そこで、そんな連中の専売特許のウマイところだけを失敬して『心理遺伝』なぞいう当世向きの名前で大々的に売り出して百パーセントの剰余価値を貪ろうと企てているのが、ここにいる吾輩ということになるがね…」