『マルドゥック・スクランブル 圧縮・燃焼・排気』

冲方 丁(うぶかた とう)著

おもしろかった

一巻目はそうでもないけどだんだん面白くなってきた
ほとんどSFというよりカジノの物語


焦げ付きは「過去の亡霊」みたいな解釈でいいのかな

一人は合法性を主張しマルドゥック09を作った
一人は非合法性を認めつつ、オクトーバー社を作った
一人は永遠の閉鎖を選んだ

バロッドの能力がCANAAN共感覚に似てると思った
バロッドがボイルドと同じ道をたどろうとしてウフコックがとめるシーンはすごくよかった
最後の攻防はハンターハンターを思い出した

電気羊では人間の定義は「感情移入できるか」
攻殻では「ゴーストが宿っているか」
マルドゥックでは「価値を創り出せるか」

運を理解し、どう過去と付き合っていくかがテーマかな
完全版は加筆されてるらしいけど、時間があったら読みたい

トゥイードルディーとかハンプティダンプティとかは不思議の国のアリスのパロディなんだ
あとはバロッドとかボイルドとかスクランブルとかは卵をイメージしてる



p209兵站(へいたん)
《10の引力》
《好手と悪手》
《Aがある手と、Aがない手》
《7以上の法則》


圧縮p128
人が悪か、武器が悪か…?

圧縮p234
その答えは沈黙だった。いつでも沈黙以外の答えはなかった。どんなときも。

燃焼p58
ネズミとの恋愛を、イルカにアドバイスされるとは思ってもみなかった

燃焼p114
「価値は、あるのではない。観念であり、創り出すものだ。命の価値を創り出す努力を怠れば、人間は動物に戻る。」

燃焼p115
「また、たとえば保護指定下のサバンナなどでは、増えすぎた草食動物の群は、ときおり、挑発としか思えない行動をする。すなわち群全体で、わざわざ肉食動物の前を通りかかり、肉食動物に追いかけさせるのだ。やがて仲間の一頭が脱落し、犠牲になると、群の残りが、仲間がバラバラに引き裂かれるところを、みなで眺めるのだよ。その時の草食動物の脳からは、明らかに興奮と快感を示す脳波が検出されている」

燃焼p117
「人間の定義とは何か?価値という観念を理解するかしないかだ。」

燃焼p255
「多くの女優が行っているが、あなたは顔の皺を除去する整形手術をしないのか」
「この皺は、苦労して手に入れたのよ」

燃焼p285
「いるべき場所、いるべき時間に、そこにいるようにしな。着るべき服、言うべき言葉、整えるべき髪型、身につけるべき指輪と一緒に。」

排気p63
「誘導とは、いかにして相手に架空の物事を想像させるかだ」

排気p189
「せっかく人間がコンピュータに言葉を覚えさせようとしているのに、他ならぬ人間の方をバグ扱いしてしまうわけだ。」

排気p297
バロッドは立ちつくした。学ばねばならないことは、沢山あった。うんざりするほど。