『海と毒薬』
遠藤周作著
おもしろかった
『沈黙』と同じ作者
日本版「罪と罰」って感じ
ただそれだけじゃなく登場人物の過去編のエピソードの質が高い
海外だったら神への信仰心から罪の意識にさいなまれるが、
日本だったらどうなるかをよく描き出している
いわゆる「罪の文化」と「恥の文化」
結局最後も「世間の罰」だけでは何も変わらないと言っている
戸田の最後に本当に大事な万年筆をあげるシーンが好き
この人の作品は人間の内面を抉り出すから好き
続編たぶん裁判で裁かれるまでを描こうとしていたらしいけど打ち切ったみたい 残念
ゲイリイ・クーパア
p78
「神というものはあるのかなあ」
「神?」
「なんや、まあヘンな話やけど、こう、人間は自分を押しながすものからものから―運命というんやろが、どうしても脱れられんやろ。そういうものから自由にしてくれるものを神とよぶならばや」
「さあ、俺にはわからん」火口の消えた煙草を机の上にのせて勝呂は答えた。「俺には神があっても、なくてもどうでもいいんや」
「そやけれど、おばはんも一種、お前の神みたいなものやったのかもしれんなあ」
「ああ」
p120
あの作文の時間も、蝶を盗んだことも、その罰を山口になすりつけたことも、従姉と姦通したことも、そしてミツとの出来ごとも醜悪だとは思っている。だが醜悪だと思うことと苦しむことは別の問題だ。
p123
「ええ」とぼくは答えた。答えたというより呟いた。