『檸檬』

梶井基次郎
まあまあ
なかなか難しかった
檸檬と桜の樹の下と冬の蠅は好きだった
日常をすごく新しい視点で見ていると言うのは感じた
文学的表現もおもしろい
都会嫌い病気持ち散歩好き
いかにも昔の作家だなあ

p20
ほんの些細なことがその日の幸福を左右する。―迷信に近い程そんなことが思われた。

p144
「視ること、それはもうなにかなのだ。自分の魂の一部分或いは全部がそれに乗り移ることなのだ」

「こんな時に美しいが、なぜこんなに短いのだろう」
彼はそんなときほどはかない気のするときはなかった。燃えた雲はまたつぎつぎに死灰になりはじめた。

p189
お前、この爛漫と咲き乱れている桜の樹の下へ、一つ一つ屍体が埋まっていると想像して見るがいい。

私はそのことにしばらく憂鬱を感じた。それは私が彼等の死を傷んだためではなく、私にもなにか私を生かしそしていつか私を殺してしまうきまぐれな条件があるような気がしたからであった。

p270
街道の闇、闇よりも濃い樹木の闇の姿はいまも私の眼に残っている。それを思い浮かべるたびに、私は今いる都会のどこへ行っても電燈の光の流れている夜を薄っ汚く思わないではいられないのである。