『火車』

ふつう

借金に苦しみ彰子という他人になりかわった新城だったが、その彼女もまた以前借金に苦しんでいた
書き方がすごく小説家っぽい
章の最後に「そうそれは○○だったのだ」みたいな
自分で書いてたけどすべてが状況証拠だけカードのタワーなんだよな
それを全部刑事のカンとか予感とかで進めてるのがなんかあいまいで嫌だった
彰子とか新城の現状に満足できないで幸せを求める姿は共感できた
そのために行動するのも悪いと思えないんだよなあ
でも親のせいとかは仕方ないけど破産する人は社会だけでなく個人としてどっかずれてると思う
ナマモノ食べれないのは結局なんだったんだ
人殺したってことかな

椿姫
クレジット・ローン破産は公害
火車の、今日は我が門を、遣り過ぎて、哀れ何処へ、巡りゆくらむ
自己破産は一人につき十年に一度
宇都宮 釣り天井のお城

p257
あたし、どうしてこんな借金をつくることになっちゃったのか、自分でもわからないのよね
あたし、ただ幸せになりたかっただけなのに

p412
「夢はかなえることができない。さりとて諦めるのは悔しい。だから夢がかなったような気分になる。そういう気分にひたる。ね?そのための方法が、今はいろいろあるのよ。」

p415
「あのね、蛇が脱皮するの、どうしてだか知ってる」
「いいえ、一所懸命、何度も何度も脱皮しているうちに、いつかは足が生えてくるって信じているからなんですってさ。今度こそ、今度こそ、ってね」
「だけど、蛇は思っているの。足があるほうがいい。足があるほうが幸せだって。そこまでが、あたしの亭主のご高説。で、そこから先はあたしの説なんだけど、この世の中には、足は欲しいけど、脱皮に疲れてしまったり、怠け者だったり、脱皮の仕方を知らない蛇は、いっぱいいるわけよ。そういう蛇に、足があるように映る鏡を売りつける賢い蛇もいるというわけ。そして、借金してもその鏡がほしいと思う蛇もいるんですよ。」

p495
これから先、お前たちが背負って生きぬいてゆく社会には、「本来あるべき自分になれない」「本来持つべきものが持てない」という忿懣を、爆発的に、狂暴な力でもって清算するーという形で犯罪をおかす人間があまた満ちあふれることになるだろう、と。