『罪と罰 上・下』

ドストエフスキー
初めて読んだけど評判通りおもしろかった

あらすじ


ロジオン・ロマーヌイチ・ラスコーリニコフ(主人公)は飲み屋でマルメラードフ(初対面の男)から
「職をなくし家が貧しくソーニャ(そいつの娘の一人)は身を売って生計を立てている。
 でも自分は飲んだくれてカテリーナ・イワーノヴナ(そいつの妻)は怒っている。」
という愚痴を聞かされる

一方プリヘーリヤ・ラスコーリニコワ(主人公の母親)から手紙でドゥーネチカ(ドゥーニャ、主人公の妹)が
スヴィドリガイロフ(家庭教師先の夫)に迫られて、マルファ・ペトローヴナ(そいつの妻)はドゥーニャが誘惑したと勘違いしてひどい仕打ちを受けたこと、誤解が解けた後むしろドゥーニャの評判が上がりピョートル・ペトローヴィチ・ルージン(実務家)に資金提供とともに婚約を申し込まれていること、もう少しでこっちに来ることを知る

[おそらくここで主人公は身を売ったソーニャと自分の大学の学費、生活費を案じ婚約しようとしている妹を重ね合わせている]


ラスコーリニコフはアリョーナ・イワーノヴナ(高利貸しの老婆)とその場に偶然居合わせたリザヴェータ(老婆の妹)を殺して金品を奪いある通りの石の下に隠した
その後 そのことに苦しみ寝込んでいたところをラズミーヒン(主人公の友人)に世話になる


ピョートル・ペトローヴィチ・ルージンが主人公の元に来るがお金を餌に婚約しドゥーニャを奴隷のようにしようという悪意を見破り二人は喧嘩する


マルメラードフが事故で死んだとこに居合わせカテリーナ・イワーノヴナに葬式代として母親からもらった金をあげる


母親と妹が到着


二人はピョートル・ペトローヴィチ・ルージンから兄(主人公)なしで会いたいと手紙で伝えられる

頼みごとのためにポルフィーリィ・ペトローヴィチ(ラズミーヒンの友人)に会い主人公は目をつけられる

マルファ・ペトローヴナが死にスヴィドリガイロフが主人公の元に来る


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スヴィドリガイロフはドゥーニャに金をあげたいと言うが主人公は変な企みを感じる


ピョートル・ペトローヴィチ・ルージンの頼みを無視し母親、妹、主人公の四人で話し母親と妹にもピョートル・ペトローヴィチ・ルージンの悪意を教え婚約破棄に


ポルフィーリィ・ペトローヴィチと再び会い心理戦を繰り広げ主人公は危うく自供しかけるがギリギリ助かる


マルメラードフの葬式に主人公とピョートル・ペトローヴィチ・ルージンが参列
ピョートル・ペトローヴィチ・ルージンはソーニャをはめて母親と妹に対する主人公の信頼の失墜と自分の信頼の復活を企んだが
主人公によって失敗に終わる


主人公はソーニャに自分の罪を話し不幸を共有することで苦しみを分け合おうとするが、結局別の種類の苦しみ別の人間同士であることを悟り依然として苦しむ

[ナポレオンの思想、一つの罪悪は百の善行に償われるといったことを話す]
[おそらくここで今度は自分と家族のために身を売るという法を犯したソーニャを重ねている]


カテリーナ・イワーノヴナが病で死ぬ


主人公のソーニャへの告白を隣の部屋でスヴィドリガイロフが聞いていたことを主人公が知り妹の身を案じる


ポルフィーリィ・ペトローヴィチが主人公に自首を促す


スヴィドリガイロフは主人公の告白をネタにドゥーニャを呼び出し金の支援と逃亡の手伝いの代わりに再び交際を迫る
しかし本当に拒否られその後自殺

主人公は色々悩み自殺なども考えた結果 自首へ


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主人公はシベリアに投獄されソーニャも付いてくる

ドーニャとラズミーヒンが婚約

母親が主人公を案じながら病で死ぬ

主人公はソーニャの愛にソーニャは主人公の愛に気づき七年間待ち新生活をしようと決意

おわり

p91
何パーセントかは年々おちて行かなきゃならんのだそうだ…どこかへ…まあ悪魔のところだろうさ、ほかの娘たちを清らかにしてやり、邪魔をしないためだそうだ。彼らに言わせれば、これはまったく素晴らしい言葉だ。まったく気休めになるし、科学的な言葉だからな。(中略)ドゥーネチカも何かのはずみでこのパーセントの中へおちるようなことになったら!…このパーセントでないまでも、何かほかの?

p115
老婆を殺し、その金を奪うがいい、ただしそのあとでその金をつかって全人類と公共の福祉に奉仕する。どうかね、何千という善行によって一つのごみみたいな罪が消されると思うかね?一つの生命を消すことによって−数千の生命が腐敗と堕落から救われる。一つの死と百の生命の交代−こんなことは算術の計算をするまでもなく明らかじゃないか!

p255
ところでわれわれはほとんど二百年というもの、あらゆる問題に対して盲目にされている…思想は、あるいは、ふらふらさまよっているかもしれません

p257
まず自分一人を愛せよ、なぜなら世の中のすべてはその基礎を個人の利害においているからである
(中略)
つまり、わたしはもっぱら自分一人だけのために儲けながら、そうすること自体によってみんなにも利益をあたえていることになり、そして結局は隣人が半分にさけたものよりはいくらかましな上衣をもらうことになるのです。

p355
明朗な心と、清新な感覚と、素直な清らかな情熱を老年まで保っている婦人は、たいていは若く見えるものだ。ついでに言うが、これらすべてのものを保つことが、おばあさんになってからも自分の美しさを失わないたった一つの方法である。

p394
人を助けるには、まずその権利を作らなきゃいけないんです。

p405
おまえにルージンが尊敬できるはずがないよ。俺は彼に会って、話したんだ。つまり、お前は金のために
身を売ろうというのだ、つまり、どう見たっていやしい行為をしているんだよ。でも、おまえがまだせめて赤くなれるのを見て、おれはうれしいよ!

p453
この世の中にはいっさいの無法行為や犯罪を行うことのできる…いやできるというのじゃなく、完全な権利をもっているある種の人々が存在し、法律もその人々のために書かれたものではない、とかいうような暗示でしたが
(中略)
問題は彼の論文によるとすべての人間はまあ《凡人》と《非凡人》に分けられる、ということにしぼられているんだ。
凡人は、つまり平凡な人間であるから、服従の生活をしなければならんし、法律をふみこえる権利がない。ところが非凡人は、もともと非凡な人間であるから、あらゆる犯罪を行い、かってに法律をふみこえる権利をもっている。

p481
老婆はどうせ病気だったんだ…おれはすこしも早くふみこえたかった…おれは人間を殺したんじゃない、主義を殺したんだ!主義だけは殺した、がしかし、かんじんのふみこえることはできないで、こちら側にのこった…おれができたのは、殺すことだけだ。しかも結局はそれさえできなかったわけだ…主義はどうなるのだ?

下巻

p82
不意に彼は、いきなり身を屈めると、床にひれ伏して、彼女の足に接吻した。
(中略)
「ぼくはきみに頭を下げたんじゃない、人類すべての苦悩に頭を下げたんだ」

p97
「どうしろ?砕くべきものはひと思いに砕いてしまう、それだけのことだよ。そして
苦悩をわが身にになうんだ!なに?わからない?いずれわかるよ…自由と力、とくに大切なのは力だ!すべてのおののける者どもとすべての蟻塚の上に立つのだ!…これが目的だ!」

p246
「ぼくたちは別々な人間なんだ…ねえ、ソーニャ、ぼくはいまになってはじめて、いまやっとわかったんだよ、昨日きみをどこへ連れて行こうとしたのか?昨日、きみを誘ったときは、まだ自分でもどこへ行くのかわからなかった。きみに見すてられたくない、ただその一心できみを誘い、ただその一心でここへ来たんだ。ぼくを見すてないね、ソーニャ?」

p321
「《苦難を受ける》ということがどういう意味をもっているか、知っていますか?それは誰のためというわけではなく、ただ一途に《苦難を受けなければならぬ》というのです。
(中略)
あるおとなしい囚人がまる一年獄中につながれていました。その囚人は毎夜ペチカの上に坐って聖書ばかり読んでいましたが、とにかく普通の読み方じゃなく、夢中になって読みふけっていたんですが、それがどうでしょう、とつぜん、なんの理由もなく、煉瓦をひとつつかむと、別に何もひどいことをしない看守長に、いきなり投げつけたものです。
まあ、投げつけたといっても、けがなどしないように、わざと一メートルほど脇のほうをねらったのです!さあ、武器をもって上司をおそった囚人がどんなことになるかは、わかりきったことです。そして《苦難を受けた》というわけです。

p386
「例えば、大きな目的が善を目ざしていれば、一つくらいの悪業は許される、というような理屈ですよ、一つの悪と百の善行です!
(中略)
人間は、いいですか、材料と特殊な人々に分けられるというんですよ。つまり、特殊な人々とは、高い位置にあるから、法律の適用を受けないばかりか、かえって、他の人々、つまり材料、ごみですな、そういう連中のために法律をつくってやる人々だ、というのです。
(中略)
つまりとくに彼を惹きつけたのは、多くの天才たちはちっぽけな悪には見向きもしないで、平気で踏みこえて行ったという事実ですよ。彼は、自分を天才だと思った、らしい、−少なくともある期間は、そう信じていた。彼は、理論を書くことはできたが、ためらわず踏みこえることは、できない、つまり天才ではない、という考えのためにひどく苦しんだ。いまでも苦しんでいる。まあ、これは自負心の強い青年にしてみれば、耐えられない屈辱ですよ、とくに現代は…」


濃い文章ばかりで読むのに疲れた
名前がややこしすぎる 呼び方も人によって変わるし
ポルフィーリィ・ペトローヴィチと主人公のやりとりはデスノートみたいで面白かった
最後に二人の新生活も新しいテーマになりうると書いてあったがそっちの物語も読みたいと思った
カラマーゾフも読みたい