『砂の女』

安部公房


まあまあおもしろかった
現実にはありえないんだろうけどすごく現実っぽく書いてあった
比喩が多用されていたが、時々よくわからないというか無駄じゃないかっていうのもあった
片道切符、往復切符ってのがテーマかな
もし自分がこういう状況になったらと想像して読むとワクワクした

砂の崖を登ろうとしてみる→女を人質に立てこもる→説得してみる→布などで縄を作って俵に引っ掛ける→女との性交を見せることで信頼を得ようとする→貯水装置を発明して再び立てこもるか村人との交渉の道具にしようとする

終わり方もありっちゃありな感じでよかったと思う

p87
教師くらい妬みの虫にとりつかれた存在も珍しい…生徒たちは、年々、川の水のように自分たちを乗りこえ、流れ去って行くのに、その流れの底で、教師だけが、深く埋もれた石のように、いつも取り残されていなければならないのだ。希望は、他人に語るものであっても、自分で夢見るものではない。彼等は、自分をぼろ屑のようだと感じ、孤独な自虐趣味におちいるか、さもなければ、他人の無軌道を告発しつづける、疑い深い有徳の士になりはてる。
勝手な行動にあこがれるあまりに、勝手な行動を憎まずにはいられなくなるのだ。

p231
互いに傷口を舐め合うのもいいだろう。しかし、永久に舐めあっていたら、しまいに舌が磨滅してしまいはしないだろうか?

p236
孤独とは、幻を求めて満たされない、渇きのことなのである。

p239
男色が一パーセントなら、女の同性愛者も、当然、一パーセントだ。それから、放火癖が一パーセント、酒乱の傾向にあるもの一パーセント、精薄一パーセント、色情狂一パーセント、誇大妄想一パーセント、詐欺常習犯一パーセント、不感症一パーセント、テロリスト一パーセント、被害妄想一パーセント…

高所恐怖症、先端恐怖症、麻薬中毒、ヒステリー、殺人狂、梅毒、白痴…各一パーセントとして、合計二十パーセント…この調子で、異常なケースを、あと八十例、列挙できれば…むろん、できるに決まっているが…人間は百パーセント、異常だということが、統計的に証明できたことになる。