『塩狩峠』

三浦綾子

まあおもしろかった
主人公永野信夫の幼少から身を呈して汽車を止めるまでの半生を描いた物語
若い頃の死や性や人生や罪の悩み方はリアルだったな
主人公が周りの言うことを素直に受け入れたり自分の悩みを素直に打ち明けたりしてたから好感が持てた
主人公のえらいところはキリスト教の教えを受けても祖母の言葉や父母の言葉を忘れずに
自分なりに正しいと思うものを選択し
あるいは他の言葉と関連付けて考えようとしているところだと思った

最後のキリスト教一辺倒なのは少しいただけないな
結局身近な大事な人を幸せにするのが一番だと思うんだよな
主人公はいくら講演をやってても結局東京には母親と妹夫妻を置いてきてるわけだし
札幌のふじ子のお見舞いはなかなか行けなくなってるわけだし
それが正しいとは自分には思えないんだよな
最後も信夫が死んだ時もキリスト教的に考えて
幸せな死にかただったってみきりを簡単につけちゃうのもなあ
後は信夫の母がキリスト教を貫くため息子と離れるっていうのも正しいのかな
信仰が必ずしも正しいのかを考えさせられる

信夫の父親の遺言はかっこよかった

p67
「約束を破るのは、犬猫に劣るものだよ。犬や猫は約束などしないから、破りようもない。人間よりかしこいようなものだ」

p170
「日常の生活において、菊に言ったこと、信夫、待子に言ったこと、そして父が為したこと、すべてこれ遺言と思ってもらいたい。わたしは、そのようなつもりで、日々を生きて来たつもりである…」

p188
しかし、法律にふれさえしなければ、何をしてもいいというわけではない。法律にふれることだけが罪だとはいえないのだ

p190
だれにも知られない、奥深い心の中でこそ、本当に罪というものが育つのではないだろうか

p205
自分を偉いと思う人間に、偉い人はいないのですよ。

p242
「君という人間は、きょう一日をじっくりと大事に生きるほんとうの意味で生きている人だ。ぼくなど、何かやりたいと心がはやるだけで、一日一日がうかうかと過ぎてしまう。気がついた時には、ぼくたちは相変わらずヒョロヒョロの苗木だが、君はいつの間にか見上げるような大樹に育っているのではないかと思うよ」