『アンダー・ユア・ベッド』

大石圭


まあまあおもしろかった
メッセージ性が一貫しててわかりやすかった
こういった変態チックなところは自分にもあると思う
人が忘れてるような思い出もちょくちょく覚えてるしなあ
絶対バッドエンドかと思ったら割とハッピーエンドでよかった
つかここまで行動力あるなら何かしら行動できただろ

p34
昔、どこかの国の王様がある実験をさせた。それは赤ん坊を人間と一切接触させずに育てたらどうなるか、という実験だった。人を見ることも、その体温に触れることもなく育てられた赤ん坊は、いったいどういうふうに成長し、どんな人間になるのか?
国王の命を受けて国中から十数人の赤ん坊が集められ、それぞれが暖房の利いた個室に隔離された。そして、授乳やオシメの取り換えの時にも人間と決して接触しないような装置を使って育てられた。
―人と接触しないと、人はどのように育つのか?
だが、その実験は成功しなかった。なぜなら、実験の途中ですべての赤ん坊が死亡してしまったからだ。飢えたわけでも、寒かったわけでも暑かったわけでもないのに、十数人のすべてが途中で死んでしまったからだ。

人は人との接触なしには生きられない?いや―もし僕がその実験材料となった十数人の赤ん坊のひとりだったとしたら、きっと僕は生き延びただろう。
僕が強い人間だというわけではない。だが僕は、孤独を飼い慣らすすべを知っている。誰からも顧みられず、忘れられ……それでも生きていく方法を知っている。

p46
浜崎千尋が好きなのか?
そうきかれたら「はい」と答えたい。そう答えることぐらいは許されるはずだ。だが、彼女を自分のものにしたいか?ときかれたら、僕には答えることができない。
千尋を、いや、誰かを幸せにする方法など、僕にはわからない。

p241
人生においてもっとも辛いことは、迫害されることではない。攻撃されることでもなければ、口汚く罵られることでもない。嫌われることでも、憎まれることでもない。
人生においてもっとも辛いこと。それは―忘れられることだ。道端に転がった石ころのように無視され、忘れられ、誰からも顧みられず、まるで存在してないかのように捨て置かれることだ。
迫害されれば逃げることができる。攻撃されれば防御することができるし、憎まれれば憎み返すことができる。だが、忘れ去られた者には何ひとつできない。

p313
敷石の下には名もない虫たちがさざまいている。そんなちっぽけな生き物にもおそらく、彼らなりの小さな希望があり、彼らなりの小さな欲望がある。夢、怒り、悲しみ……そして彼らなりの小さな―だが、情熱に満ちた―恋と喜びがある。