『対岸の彼女』

おもしろかった
すごく友達ができない感じ、それでも出会いに少しの期待をして何とか一歩を踏み出そうとする感じが共感できた
友達、まだできないの?とかいう人の神経がわからない
高校の友達と大学の友達は違うし、高校の友達で仲良いのがいるだけまだましと思ってたけど
最近はそうでもないんじゃないかとおもってる今
本当に気が合う友達、ずっと付き合っていける友達なんて存在するのかな
本当に人づきあいって疲れるけど一人じゃさびしいジレンマだよなあ
女子高生時代と会社時代で葵が立場が逆になる構成が面白かった


赤頭巾ちゃん気をつけて
十九歳の誕生日にシルバーリングもらうと、もらった人は一生しあわせになれる
フランク・シナトラ「観衆の心をとらえる方法はひとつしかない。それは誠実かつ謙虚な姿勢で観衆に訴えかけること。」

p98
二十歳で指しゃぶってる男なんかいないよ

p172
「あたしいろいろ言われてるけど、全然平気なんだよ」
「大事なものが学校にはないから?」
「それもあるけど…今みんながあたしについて言っていることは、あたしの問題じゃなくあの人たちの抱えてる問題。あたしの持つべき荷物じゃない。人の抱えてる問題を肩代わりしていっしょに悩んでやれるほど、あたしは寛大じゃないよ」

p191
「ずっと移動してるのに、どこにもいけないような気がするね」

p285
大学にはいってまず驚いたのは、だれも彼もがまったくふつうに葵に話しかけてくることだった。ねえ、サークル決めた?クラスコンパがあるんだって、いこうよ。その服どこで買ったの?彼ら、彼女らは、最初から友達として葵に接してきた。
学生食堂で昼飯を食べ、授業のあとは安居酒屋に飲みにいった。コンパと呼ばれる、大人数の騒がしい飲み会にも参加し、クラスメイトの住む四畳半の下宿に泊めてもらった。休みの日に待ち合わせをして映画を見たり買いものをする友達ができ、毎晩電話をしあう恋人のような男友達ができた。
けれどもどうしても葵は彼らに心を許すことができなかった。調子を合わせて笑ったり怒ったりし、恋愛のまねごともできる。けれど一定の距離を超えて相手が近づいてくると、葵はあわててバリアをはる。電話に出なくなったり学校にいかなくなったりして、また一定の距離ができあがるのをじっと待つ。幾人かの友達はそのうち離れていったし、男友達が恋人になることはなかった。だれかと親しくなることはこわかった。葵のなかで、親しくなることは加算ではなく喪失だった。

p294
私のできないことのなかに、人と関わるという根本的なことも含まれているにではないか。そう思いついて葵はぞっとした。

p313
葵ももうひとりの女の子も、こわかったのだ。同じものを見ていたはずの相手が、違う場所にいると知ることが。それぞれ高校を出、別の場所にいき、全く異なるものを見て、かわってしまったであろう相手に連絡をとるのがこわかった―友達、まだできないの?と訊かれるのがこわかった―。

p321
なぜ私たちは年齢を重ねるのか。生活に逃げこんでドアを閉めるためじゃない、また出会うためだ。出会うことを選ぶためだ。選んだ場所に自分の足で歩いていくためだ。

p334
人と出会うことは、自分の中にその人にしか埋められない鋳型を穿つようなことだと思っていた。ひとと出会えば出会うだけ、だから自分は穴だらけになっていくのだ、と。