『Swan Song』

おもしろかった


題名の由来はなぜ人は経を唱えるのかの例で妙子が出した白鳥の話

「白鳥は死ぬ間際に一声だけ美しく啼くという伝説がありますが、ご存知ですか?」

「しかし、実際には、たとえ最期の時だとしても、白鳥は美しい声なんか出すことは出来ませんでしょう?そんなことは、伝説が生まれた時代にだって、普通に観察をしていればわかることです。それなのに、なぜこんな伝説が生まれて、語り継がれているのかと、考えたことはございますか?」

「私は思うのです。一生をあの絞殺される寸前のような醜い声でしか啼けないとするならば、白鳥の声と云うのはみじめで救いのない声になってしないます。でも、最後に美しい声で歌えるという物語をそこに作れば、たとえ誰もが嘘だと知っていたとしても、そこに希望を見出すことが出来るのです。この伝説をモチーフに取り入れた先達は、それぞれの自分なりの思いをこの夢の歌に見ています」

「…いや、嘘だと知っているからこそ、そこに隠された願いが、実際に聞こえている白鳥たちの鳴き声の醜ささえ美しく輝かせるのでしょう。それは見る者の心次第で色を変える孤独な美しさなのかもしれませんが。…私はこのありかたこそが、祈りの本質だと考えています。切実なのに空虚で、哀しくはありますが、必要なのです」

死に際の一声
それは美しいのか醜いのか
飽くまで幻想だからこそ美しく感じるのか

テーマが一貫しててメッセージ性もある
それぞれの登場人物の価値観・考え方との対比もわかりやすい
やってよかった

『SWAN SONG』を解読する。 - Something Orange

『SWAN SONG』ネタバレ。 - Something Orange

『SWAN SONG』名台詞集。 - Something Orange

これで大体分かるっていうね
つまりは絶望・世界の不条理さ・運命とかに逆らう、また自分自身とも闘うっていう話

鍬形が徐々におかしくなり、学校全体もおかしくなり、強姦・殺人が当たり前になっていく様子は
まさにアイヒマン実験スタンフォード監獄実験を思い出させた
心理学で調べたばっかだったし
人は状況によってあそこまで残酷になれるんだよなきっと
でもあれはあれで形がどうあれ今の世界に逆らってる
生きることを諦めていない結果なんだよな

宗教との絡みは今読んでるカラマーゾフの兄弟を思い起こさせた
この物語ではあの「大智の会」は逆らう者として描かれているのかな
やっぱ弥勒様が下生されるまでの我慢って考えてるからあくまで気休めって意味でそこまでな感じか
もっと食料が切羽詰まったときでないと…
まだ自分では逆らってない状態だな

あるえの存在は映画「CUBE」にいたあの男性を思い出させる
CUBEの場合はあの男性だけ生き残って皮肉だねえって感じで終わってるけど
この作品では何の罪のないあるえでさえ死んでしまう
まあ神の子って考察もあるけど俺はあるえはそれこそ「世界に逆らっていない存在」だと思うけどな
毎日笑って
そういった意味で柚香に近いのかも
それか「世界を理解してない存在」って言ってもいいかな
最初に出てきたサラリーマンなんて完全に諦めてるけど

鍬形と司と雲雀は全然世界への抗い方が違うけどどれも正しい
まあ自警団でもそうだけど理論なんて言い方次第だからなあってのは感じた

生きるってことは地べたを這いつくばって行くことなんだな
すごく共感できる主人公だったな

でも一番俺が近いのは田能村かな
ときにはどうにでもなれって思っていいと思う
ほんとうに譲れないときに全力で抵抗すれば


一番好きなセリフ

「だって、傲慢でむかつく何かが、僕の手の届くところまで入ってきてるんですよ。他人事なら黙って見ているしかないですが、もう僕は傍観者じゃないんだ。僕の意思で戦うことが出来るんです。ずっと嫌っていたあいつに、意地を見せつけるチャンスじゃないですか」


「川瀬さん、立ってください。負けちゃ駄目ですよ。運が良ければ、いつの日か一発くらい殴りつけることが出来るかもしれない。それはきっと凄く気持ちがいいはずですよ。このままじゃまんまり情けないじゃないですか。僕はいやなんですよ」

名作と言われてるのもうなずける