『カラフル』

森絵都

まあおもしろかった

テーマとしては人生続けてりゃいいことあるさってのと
みんなあくどい部分と良い部分を持ってるっていうことかな
映画みたいな
じつに映画化むきな

習い事しまくって浮気もした母親
上司がいなくなり格上げで喜ぶ父親
嫌みばかり言う兄
援交している初恋の人
でも
自分の為に美術系大学を調べてくれたり
弟の学費や医者という職業を考えたり

確かに他人の体だと思ったらそりゃ好きにふるまえるよなあ
自分の体でもそんな風に動けたらなあ

p88
今だからこそ価値のある体で、今の自分にこそ価値のあるものを手に入れる。それがいけないことだなんて夢にも思ってないみたいだ。

p167
「しかし父さんの人生は父さんなりに、波瀾万丈だ。いいこともあれば悪いこともあった。それでひとつだけ言えるのは、悪いことってのはいつかは終わるってことだな。ちんまりした教訓だが、ほんとだぞ。いいことがいつまでも続かないように、悪いことだってそうそう続くもんじゃない」

p186
「この世でもあの世でも、人間も天使もみんなへんで、ふつうなんだ。頭おかしくて、狂ってて、それがふつうなんだよ」
「ひろかだけじゃない?」
「ひろかだけじゃないよ」
「ときどきうんと残酷になるのはひろかだけじゃない?」
「ひろかだけじゃないよ」
「だれかをうんと傷つけたくなるのはひろかだけじゃない?」
「ひろかだけじゃないよ」
「うんとやさしいひろかと、うんと意地悪なひろかがいるの」
「みんなそうだよ。いろんな絵の具を持ってるんだ、きれいな色も、汚ない色も」


ひろかの持ってる明るい色が、真の暗い日々をいつも照らしていたんだぞ。そう教えてやれないのが残念だった。

人は自分でも気づかないところで、誰かを救ったり苦しめたりしている。

この世があまりにもカラフルだから、ぼくらはいつも迷ってる。

どれがほんとの色だかわからなくて。

どれが自分の色だかわからなくて。

「三日に一度はエッチしたいけど、一週間にいちどは尼寺に入りたくなるの。十日にいちどは新しい服を買って、二十日にいちどはアクセサリーもほしい。牛肉は毎日食べたいし、ほんとは長生きしたいけど、一日おきに死にたくなるの。ひろか、ほんとにへんじゃない?」

不安げに念を押すひろかに、
「ぜんぜんふつう。平凡すぎるくらいだよ」

ぼくは強く言いきり、小声でつけたした。
「でも、死ぬのだけはやめたほうがいい」

p244
「でも、自分のこととなると、やっぱりそうもいかないよ。いろいろ慎重になるし、不安にもなる。ケチにもなるしさ」
「ホームステイだと思えばいいのです」
「ホームステイ?」
「そう、あなたはまたしばらくのあいだ下界ですごして、そして再びここにもどってくる。せいぜい数十年の人生です。少し長めのホームステイがまたはじまるのだと気楽に考えればいい」